不登校・引きこもり

不登校とは|行きしぶり・登校しぶりの背景と支援

   

要点(まずはここだけ)

不登校は「行く/行かない」の問題に見えて、実際は背景の要因(心・体・環境)の組み合わせで起こることがほとんどです。
当院では、まず次の順で立て直しを考えます。

1)安全(強い不安・恐怖反応・自傷/他害リスクの確認)
2)生活(睡眠と日中リズムの土台づくり)
3)つながり(学校と切れない形で連絡を保つ)
4)学び(本人に合う学び方を再設計する)
※本ページは自己診断ではなく、受診や支援の選択肢を整理するための情報です。

受診の目安(まずはミニチェック)

次のような状態が、いくつか当てはまり、2〜4週間以上続く場合は相談のタイミングです。

  • 欠席・遅刻・早退が増え、学校生活が回りにくい
  • 朝の不調(頭痛・腹痛・吐き気など)が続き、登校に影響している
  • 学校の話題や場面で強い不安・恐怖反応(涙、パニック)が出る
  • 昼夜逆転や睡眠の乱れが進み、家庭だけで立て直しにくい
  • 気分の落ち込み・強い不安が続き、生活全体がしんどそう
  • 安全面の心配(自傷、暴力など)がある/家族が限界に近い
  • 自傷・他害の切迫が疑われる場合や、急激な悪化がある場合は安全確保を優先し、夜間休日を含めて医療機関・救急等へご相談ください。詳しい「受診の目安・当院での対応」はページ末尾にまとめています。

はじめに

朝になると頭痛や腹痛を訴える。玄関までは行けるのに、そこから先に進めない。
学校の話題だけで固まってしまう。こうした相談は珍しくありません。

ここで大切なのは、「甘え」「根性不足」と単純化しないことです。
不登校は、本人の努力の不足ではなく、心身がこれ以上の負荷に耐えられないというサインとして起こることが多いからです。

当院では、「登校できるかどうか」だけで評価せず、生活全体が回る形を優先して、家庭・学校と一緒に立て直しの道筋を考えます。

ふさぎこんでいる子供と、支える大人

不登校とは

不登校は診断名ではなく、欠席が続く「状態」です。
背景は1つとは限らず、発達特性・学習のつまずき・不安や抑うつ・トラウマ反応・睡眠の乱れ・身体要因(ODなど)・学校環境が重なっていることが多くあります。

評価(いわゆる“診断”)の目的は、名前を当てることではありません。
何が起きていて、どこを支えると楽になるかを整理し、回復の順番を決めるために行います。

よくあるサイン

  • 朝の身体症状(頭痛・腹痛・吐き気)で動けない
  • 学校に近づくと強い不安、涙、怒りが出る
  • 「行きたい気持ちはあるのに動けない」と訴える
  • 夕方以降は元気に見えるが、朝が極端に崩れる
  • 宿題・提出・授業の負担が重くなり、避けるようになる
  • 友人関係・クラス・先生の話題を避ける
  • 自己否定が強まり、「どうせ無理」「消えたい」などが増える

発達段階のサイン

不登校(行きしぶり・登校しぶり)は、年齢によって“前に出る困りごと”が変わります。ここでは代表的な傾向だけを整理します。

  • 乳幼児〜就学前(0〜5歳):登園・登校しぶり/分離不安/感覚過敏などがきっかけになりやすい
  • 学童期(6〜12歳):学習のつまずき、友人関係、叱責体験、疲労の蓄積が背景になりやすい
  • 思春期前半〜中期(13〜15歳):対人評価・SNS・部活・成績など負荷が増え、不安や抑うつ、トラウマ反応が前面に出ることがある
  • 思春期後期(16〜18歳前後):進路・自立が現実化し、睡眠や体調(OD含む)とメンタルの両面から再設計が必要になることがある

不登校の背景にあるもの

不登校は多くの場合、医学的に見落としてはいけない要因と、

環境の負荷(学校・家庭)が混ざって起こります。
背景を整理すると、支援の優先順位が決めやすくなります。

1)発達特性 ・神経発達症(ASD/ADHDなど)

  • 自閉スペクトラム症(ASD)
     集団の暗黙のルールや感覚刺激が強い負担になり、学校が「疲れる場」になりやすいことがあります。
  • ADHD(注意欠如・多動症)
    忘れ物や衝動性、切り替えの難しさが注意・叱責につながり、自己肯定感が下がっていくことがあります。
  • 学習のつまずき(読み書き・計算など)
    学習のつまずきがあると、「授業そのものが怖い」「恥をかきたくない」に結びつくこともあります。

2)不安・抑うつ
分離不安、社交不安、強い緊張、うつ状態があると、「行く気がない」ではなく「行きたくても動けない」になりやすいです

3)トラウマ反応(PTSDを含む)・強い恐怖
いじめ、暴力、事故、強い叱責、教室での怖い体験などをきっかけに、学校や特定場面が「危険信号」になってしまうことがあります。この場合、「慣れれば大丈夫」の押し込みが逆効果になることがあるため、安全設計が重要です。

4)睡眠・生活リズムの乱れ
夜更かし、昼夜逆転、朝の光不足、長時間のスマホ使用などで、朝のエネルギーが出にくくなります。睡眠の乱れは“原因でもあり結果でもある”ので、早い段階で整えるほど立て直しやすくなります。

5)起立性調節障害(OD)など身体要因
朝のだるさ、立ちくらみ、頭痛、起床困難が続く場合、ODが関与していることがあります。
ODは思春期に多く、午前に症状が強い傾向があり、不登校と併存することもあるため、早めに評価しておくと支援の方向性が定まりやすくなります。

6)学校・家庭の環境変化
クラス替え、担任変更、部活、受験、SNSトラブル、家庭の病気・転居など。
もともとの特性の上に出来事が重なると、「今のやり方では耐えられない」という形で不登校が表れることがあります。

迷ったときの考え方

結論は二択ではなく、優先順位の設計です。

1)まずは「安全」|危険サインがあれば“回復優先”
次のようなときは、登校刺激が強すぎる可能性があります。

  • 学校に関連するとパニック・過呼吸・震えが出る
  • 学校や先生の話題だけで固まる/涙が止まらない
  • 夢・フラッシュバック・強い回避が続く(PTSD疑い)
  • 抑うつが強く、希死念慮や自傷が疑われる
  • 眠れない・食べられないなど体力が落ちている

この場合は「行かせる」より、まず安全と安心を整えることが最優先です。

2)次に「生活」|回復の土台を作る
休むとしても、生活が崩れきると回復に時間がかかります。
起床・就寝、朝の光、食事、最低限の活動を一緒に整えていきます。

3)その次に「つながり」|学校と“細く長く”つながる
完全に切れてしまうと、戻るハードルが上がります。
担任・養護教諭・別室など、本人が耐えられる形で関わりを残します。

4)最後に「学び」|学校以外も含めて選択肢を持つ
「学校に戻る」だけが正解ではありません。
学校内外の支援やICT活用など、多様な学びの枠組みも使いながら再設計します。

休ませると放置の違い

休ませる判断は、甘やかしではありません。

ただし、放置にならないように回復の道すじを作ります。

  • 生活リズムの最低ラインを決める(起床・食事・入浴など)
  • 安心できる活動を少し残す(散歩、買い物、短い運動など)
  • 学校との連絡は「ゼロにしない」(負担にならない頻度で)
  • 家の中での役割を少しだけ持つ(小さく、失敗しにくく)

トラウマ反応が疑われる場合

トラウマ反応が疑われるとき、「行けば慣れるはず」という善意の押し込みで悪化することがあります。

  • 学校や特定の先生の話題で体が固まる
  • 似た声や足音、チャイムで動けなくなる
  • 夜に夢で繰り返し見る

このような場合は刺激をいったん下げ、安全と安心を確保しながら、必要に応じてトラウマに焦点を当てた心理療法(TF-CBTなど)を検討します。

評価の流れ

当院の目的は「無理に登校させる」ではなく、生活機能の回復と、支援の順番を明確にすることです。

初診では、必要に応じて次を整理します。

  • いつから、何がきっかけで、どんなペースで休みが増えたか
  • 困っている場面の具体(教室、友人、授業、登下校、評価など)
  • 睡眠・生活リズム(就寝起床、朝のつらさ、日中活動)
  • 身体要因(OD、頭痛、腹痛、貧血などの可能性)
  • 不安・抑うつ・トラウマ反応の有無(安全面も含む)
  • 発達特性・学習のつまずき(読む・書く・計算、板書、提出物など)
  • 学校環境(担任、クラス、部活、いじめ、SNSなど)と家庭の負荷

必要に応じて、質問紙、心理検査(WISC等)、症状評価尺度なども組み合わせて整理します。

不登校の支援と治療

支援は“正論で説得する”ことではなく、回復の条件をそろえることです。

1)生活リズムの調整(支援の土台)

起床・就寝の安定、朝の光、朝食、夜間の長時間スマホの見直しなど、生活の土台を整えます。必要に応じて体調評価や睡眠障害の確認も行います。

2)環境調整と登校のステップづくり

保健室・別室・短時間登校・段階登校など“行きやすい形”から検討し、課題量や提出、テスト、席、刺激(音・光)の調整、オンラインや教育支援センターとの連携なども含めて、続けられる形に整えます。

3)心理的支援(必要に応じて)

不安への認知行動療法(CBT)等、トラウマ反応への心理支援、自己肯定感を支えるカウンセリング、家族面接(コミュニケーション調整)などを、状態と段階に合わせて検討します(院内対応または連携機関のご紹介を含みます)。

4)薬物療法(必要な場合のみ)
強い不安・抑うつ・睡眠障害が続き、生活の立て直しが難しい場合に検討します。
目的は「薬で登校させる」ではなく、回復を妨げる症状を軽くして支援が入りやすくすることです。

当院で大切にしていること

当院では、不登校を「病名」ではなく「サイン」と捉え、背景要因を整理して支援の優先順位を決めることから始めます。
登校の可否だけで判断せず、①安全 ②生活(睡眠・朝の体調/OD含む)③つながり ④学び、の順に“回る形”を整えます。
家庭と学校で無理なく続けられる調整を土台にし、必要に応じて心理支援・医学的サポートを段階的に組み合わせます。

国内外のトピック|支援は「禁止」より「機能回復」を重視する流れへ

日本では、不登校支援を「学校復帰一択」にせず、学校内外の支援を組み合わせて学びを保障する方向が示されています(COCOLOプラン等)。

   

海外では「School refusal」や「EBSA(Emotionally Based School Avoidance)」の枠組みで、学校回避を維持している要因を整理し、段階的に介入を組み立てる考え方が広がっています。

   

当院でも、背景の地図を描き、生活機能の回復を優先しながら、家庭・学校で実行できる形に落とし込むことを重視します。

   

参考文献

・文部科学省:不登校に関する調査・施策資料(不登校等に関する統計・COCOLOプラン)
・NICE:Post-traumatic stress disorder(NG116)
・AACAP:Facts for Families(School Refusal)
・ 起立性調節障害(OD)に関する国内の解説・診療資料(小児領域の専門学会等)

関連ページ

・不登校(行きしぶり・登校しぶり)の背景と支援(本ページ)

ASD(自閉スペクトラム症)

ADHD(注意欠如・多動症)

・学習障害(限局性学習症:LD)

子どもの不安症(不安障害

子どものうつ病

子どもの睡眠障害

起立性調節障害(OD)

子どものPTSD

まとめ

不登校は病名ではなく、心身の負荷が限界に近いことを知らせる「状態(サイン)」です。
支援は「行かせる/休ませる」の二択ではなく、安全→生活→つながり→学びの順で整えると現実的です。
背景には、発達特性や学習のつまずき、不安・抑うつ、トラウマ反応、睡眠の乱れ、ODなどが重なることが多く、評価して優先順位を決めることが回復の近道になります。

受診のご相談

当院では、まず安全と生活(睡眠・朝の体調)を確認し、不安・抑うつ・トラウマ反応、発達特性、ODなど改善しうる要因を整理します。
そのうえで、家庭と学校で回る環境調整と心理支援を組み合わせ、段階的に「戻れる道」を一緒に設計します。
初診では「学校へどう伝えるか」「家庭でどう支えるか」も含めて、具体策まで落とし込みます。

監修・更新情報

監修:篠原一之(医師/医学博士/キッズハートクリニック外苑前院長/長崎大学医学部 名誉教授/長崎大学医学部 元教授)

最終更新日:2026年2月11日

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