不登校とは|子どもの特徴と支援
はじめに
朝になると体調不良を訴えたり、学校に行こうとすると涙が出たり、学校には行けても教室に入れないことがあります。
こうした姿を目にすると、親御様は、それが甘えなのか病気なのか判断に迷い、どのように対応すればよいのか悩まれることがあるかもしれません。
不登校は特別なことではなく、全国の小中学生の約2〜3%に見られる身近な問題です。背景には学校生活のストレスや友人関係だけでなく、発達特性や心の病気が関わっていることが多いと考えられています。

不登校の特徴
不登校とは、病気や経済的理由がないのに学校に行けない、あるいは行かない状態が続いていることを指します。
- 朝になると頭痛や腹痛を訴える
- 学校に行こうとすると強い不安や緊張が出る
- 家では落ち着いて過ごせることもある
これは「怠け」ではなく、心身のSOSかもしれません。
不登校の背景にある疾患
不登校は単なる「登校しぶり」ではなく、その背景に発達障害や心の病気が関わることがあります。代表的なものを挙げます。
- 自閉スペクトラム症(ASD):集団生活や対人関係が負担になり、不安・緊張が強まる
- ADHD:忘れ物や授業中の集中のしずらさから学校が辛くなる
- 学習障害:読み書きや計算の困難から学習意欲が低下し、不登校へつながる
- 不安障害やうつ症状:登校時に強い不安を感じたり、気力の低下が続くことで学校に行けなくなる
- 睡眠障害:昼夜逆転や不眠が続き、登校が難しくなる
- PTSD(心的外傷後ストレス障害):生徒によるいじめや、担任からの叱責といった強いストレス体験がきっかけとなり、学校への恐怖や回避が強まって不登校につながる
このように、不登校の背景にはさまざまな要因が隠れています。
「学校に行けないこと」そのものではなく、その背景を丁寧に理解することが治療の第一歩になります。
年齢ごとに見られやすい不登校の特徴
- 小学校低学年:母子分離不安(保護者と離れる不安)、朝の登校しぶり
- 小学校高学年:学習のつまずき、友人関係のストレス
- 中学生以降:いじめや進路不安、部活動のストレス、昼夜逆転やネット依存
不登校のある子どもの日常生活での困りごと
- 家庭生活:生活リズムの乱れ、家族への負担感
- 学校生活:学習の遅れ、友人関係が遠のく
- 本人の気持ち:罪悪感や劣等感、将来への不安
不登校の診断と評価
- ウェブ問診
- 医師の診察
- 本人や親御様からの聞き取り
- 本人の心理状態の評価(不安、抑うつなど)
- 発達検査や心理検査による特性の把握
こうした評価を通して、背景にある特性や病気を明らかにし、適切な支援につなげます。
不登校の支援と治療
- 生活リズムの調整:起床・就寝時間を整える
- 環境調整:別室登校や段階的な復帰を検討
- 心理的支援:カウンセリング、認知行動療法(CBT)
- 必要に応じて薬物療法を検討します。
- 強い不安を和らげる
- 抑うつや意欲低下の改善
- 睡眠リズムを整える
当院でできること
- 背景にある発達特性や心の状態の評価
- 学校と連携した支援計画の作成
- 本人や親御様のカウンセリング
- 必要に応じた薬物療法を含む多面的支援
まとめ
不登校は誰にでも起こりうる身近な問題であり、その背景には発達障害や心の病気が隠れていることがあります。
背景を理解し、支援を組み合わせることで、お子さんは少しずつ前に進むことができます。
親御様が一人で抱え込む必要はありません。親御様と協力しながら、お子さんが安心して成長できる環境づくりをお手伝いします。
参考文献
- 文部科学省. 不登校に関する調査報告. 2023.
- 日本児童青年精神医学会. 学校不適応・不登校への対応指針. 2022.
- Bernstein GA, et al. School refusal: clinical picture and treatment. Child Adolesc Psychiatr Clin N Am. 2007.