子どもの解離症とは

ぼーっとする・記憶抜け

目次

ぼーっとする、記憶が抜ける、体が動かない。そんなときは原因を急いで決める前に安全確認を整えることが大切です。本ページでは、安全確認、周囲の説明のそろえ方、支援の順番、相談の目安を整理します。

要点

  • 解離は「わざと」ではありません。注意・意識・記憶・身体反応などのまとまりが一時的にほどけて起こります。
  • 大切なのは、原因を断定する前に安全の確認と、家庭・学校での説明の一致を作ることです。
  • 支援は “深掘り”より順番が重要です(安全→説明→生活回復→必要時の専門支援)。
  • 発達特性や不安、睡眠不足などの過負荷が関与していることがあり、環境調整で改善する余地があります。
  • このページは自己診断のためではなく、状況整理と支援の選択肢をまとめる目的の情報です。

受診の目安

  • ぼーっとする/固まる状態が続き、授業や生活に支障が出ている
  • 記憶の抜け(時間が飛ぶ等)があり、学校で誤解やトラブルにつながっている
  • 体が動かない・声が出ない・歩けない、または発作のように見える症状がある
  • 睡眠が崩れ、朝の起床が難しい日が続く/欠席・遅刻・早退が増えている(不安や気分の落ち込みが重なる場合も含む)
  • 家庭と学校の対応が揺れて、本人の安心が保てない
  • 自傷/希死念慮が疑われる場合や、急激な変化がある場合は安全確保を優先し、早めに医療機関へご相談ください。
  • 意識がはっきり戻らない/強い頭痛・麻痺・けいれんが続く/頭部外傷後など、急性の危険が疑われる場合は救急・小児科等への相談を優先してください。

はじめに|誤解

「急にぼーっとして、呼んでも反応が薄い」
「さっきの出来事を、あとで覚えていない」
「体が動かない/声が出ない」
「発作みたいに見えることがある」

こうした症状が起きると、親御さんは不安になります。

脳や神経の病気ではないか、学校で何か起きていないかと心配になるのは当然です。

一方で、症状が“説明しにくい”ために周囲から誤解されやすく、家庭や学校の対応が揺れて、結果として本人の緊張が上がってしまうことがあります。

解離は、本人が意図して起こしているものではありません。

当院では、医学的な見落としを避けることを大切にしながら、「わざと」とは捉えず、誤解を減らす説明を共有し、生活を少しずつ回復させる道筋を一緒に整理します。

このクリニックでご相談いただけること

  • 解離症状、機能性神経症状症(FND)、機能性発作(PNES)が疑われる症状の背景整理
  • ぼーっとする、記憶が抜ける、体が動かない、声が出ない、発作のように見える状態の見立て
  • 不安、睡眠、発達特性、学校負荷、対人ストレスなど、重なりやすい要因の整理
  • 家庭での支え方、学校への伝え方、誤解を減らす説明の共有
  • 段階的な生活再建、登校や活動量の戻し方の相談
  • 必要に応じた心理支援、小児科・神経領域との連携

初診では、症状が起こりやすい場面、前後のきっかけ、睡眠や登校への影響、不安や過負荷、発達特性、学校・家庭での対応を整理し、安全確認と生活回復の順番を一緒に考えます。

解離症状とは|3分類

解離症状は、注意・意識・記憶・感覚・身体反応などの“まとまり”が一時的にほどけることで起こります。子どもの診療では、次の3つに分けて整理すると支援につながりやすくなります。

(1)意識・注意の解離

  • ぼーっとする/固まる/反応が薄い
  • 呼びかけに遅れて答える
  • 「授業中に意識がふっと途切れ、気づくと数分たっていることがある」

(2)記憶の解離

  • 出来事の一部が記憶から抜ける/時間が飛ぶ
  • あとで振り返ると、記憶が抜け落ちる部分がある

(3)身体の解離(解離性神経学的症状症を含む)

  • 体が動かない(脱力・麻痺)/歩けない
  • 声が出ない
  • 感覚の変化(しびれ、感覚が鈍い 等)
  • 発作のように見える症状(機能性発作/PNES など)
  • 分類名としては、ICD-11では「Dissociative neurological symptom disorder(解離性神経学的症状症)」が解離症群の中に位置づけられ、DSM-5-TRでは「Functional Neurological Symptom Disorder(Conversion Disorder)」として整理されています。

年齢別の見え方

乳幼児〜就学前(0〜5歳)

言葉で説明しにくく、固まる・急に泣き止む・退行(赤ちゃん返り)など、行動や身体反応として出やすい時期です。まずは生活の安全と、大人の関わりの一貫性が土台になります。

学童期(6〜12歳)

授業中に“意識がふっと途切れる”、反応が遅い、急な体調不良として出ることがあります。周囲から「聞いていない」「ふざけている」と誤解されやすいので、家庭と学校で同じ説明を共有することが重要です。

思春期前半〜中期(13〜15歳)

離人感・現実感の揺れ、記憶の抜け、発作様症状などが目立つことがあります。対人・評価・行事などの緊張が続き、寝不足が重なると、心身の余力が切れて症状が出やすくなります。

思春期後期(16〜18歳前後)

通学・外出・進路など生活機能の揺れが大きくなりやすい時期です。「症状をゼロにする」より、出席・単位・居場所・通学形態などを含めた“生活再建”を同時に設計します。

背景|過負荷の整理

解離は、いじめ、事故、暴力、医療体験など強い出来事と関連することがあります。ただし臨床では、それだけでは説明できないことも多く、次のような要素が重なっていることがあります。

  • 慢性的な緊張や不安
  • 睡眠不足、生活リズムの崩れ
  • 学校や家庭で『休む/行く』の二択が続き、追い込まれている状態
  • 発達特性による“過負荷”(後述)

強い出来事がはっきりしない場合でも、日常の緊張が続いて“整え直す余白”が少ないと、症状が出やすくなったり長引いたりすることがあります。ここは「誰のせいか」ではなく、安心と見通しを増やすポイントとして扱います。

鑑別|要点

  • てんかん:発作の型・脳波・経過など神経学的評価が手がかりになります。見た目が似ることがあるため「見落とさない」ことが大切です。
  • 失神:立位、脱水、体調条件と関連しやすく、前駆症状や状況が手がかりになります。
  • 身体症状症:腹痛・頭痛・吐き気・倦怠感などの身体症状が前景に出て、回避と生活崩れの悪循環が中心になりやすい傾向があります。
  • 解離/FND:麻痺・歩行・失声・発作様症状など“神経症状に見える型”が前面に出ることがあります。

※実際には併存や移行もあり得るため、経過と生活状況を合わせて全体像で評価します。必要に応じて小児科・神経領域の評価と並行して整理します。

発達特性|過負荷

発達特性が関与していると、過負荷が積み重なりやすく、解離が起きやすくなることがあります。
目的は「診断名を足すこと」ではなく、どこで過負荷が積み重なり、どこを整えると回り始めるかを見立てることです。

臨床的に関係しやすいポイント:

  • 感覚刺激への弱さ(過敏):音・光・人混みなどで過負荷が積み重なる
  • 切り替え/予測困難への弱さ:予定変更や曖昧な指示で緊張が急上昇する
  • 実行機能(段取り・時間管理)の弱さ:日常が慢性的に追い立てられ、疲労と叱責が重なる
  • 情動調整の難しさ:強い感情刺激で固まりやすく、回復に時間がかかる

ここを整えると、無理に頑張らせるよりも、発生頻度や持続が下がることが少なくありません。

支援の順番

安全→説明→生活回復→必要時の専門支援、という順で考えます。

解離症状の支援は、“深掘り”より順番が重要です。

(1)安全の確保(環境調整)

叱責や追い込みで悪循環が強まりやすいことがあります。学校は関わりを切らず、負荷を調整しながら“つながり”を保ちます。家庭でも、症状を止めようとして長い説得を重ねるより、落ち着ける関わりを優先します。

(2)症状の説明(心理教育)

「本人の意思で起きている症状ではない」ことを、本人・家庭・学校で共有します。大人の説明がそろうだけで、本人の警戒が下がり、症状が和らぐことがあります。

(3)生活機能の回復(段階的な階段)

休む/行くの二択ではなく、保健室・別室・短時間など段階的な“階段”を作ります。睡眠と活動量を整え、回復の土台を作ります。発達特性が関与している場合は、刺激・手順・見通し・休憩・居場所の調整が特に重要になります。

(4)必要に応じて心理療法・専門的支援へ

安全と生活が整ってから、トラウマ関連支援や不安への認知行動療法(CBT)などを検討します。本人の自己調整が整う前に“深掘り”を先行させないことが重要です。

(5)FND(運動・発作様症状)では「身体の再学習」も大切

FNDの一部では、動き方・呼吸・注意の向け方を整え直す支援(リハビリテーション等)が有効になることがあります。当院では必要に応じて、小児科・神経領域・リハビリ等と連携し、本人が続けられる形に落とし込みます。

学校での配慮|階段

学校では「休ませる/行かせる」の二択にせず、段階づけ(階段)を作ることが有効です。

例:

  • 別室登校、保健室利用
  • 短時間登校(午前のみ、特定授業のみ)
  • 課題量や評価方法の調整
  • 刺激の調整(座席、休憩、イヤーマフ等)

「本人が安心できる場所」と「戻る手順」を用意すると、回復が進みやすくなります。

家庭での工夫|安全

家庭では、症状を否定せず、責めず、対応を一定にすることが基本です。

  • 症状が出たときの対応を“型”にする(安心→次の一手→終了)
  • 睡眠を整える(朝の固定、夜の設計)
  • 家庭内の会議を長引かせない(消耗を減らす)
  • 家族が限界に近い場合は、役割分担と支援を優先する

本人の安全と安心が整うほど、症状が固定化しにくくなります。

当院のスタンス

当院では、解離症状を「わざと」「気を引くため」とは捉えず、まず安全確認と誤解を減らす説明を大切にしています。

診察では、ぼーっとする、記憶が抜ける、体が動かない、声が出ない、発作のように見えるなどの症状が、いつ、どの場面で起こりやすいかを整理します。あわせて、睡眠、登校、学校での負荷、対人関係、家庭での緊張、不安、発達特性などを確認し、生活のどこが回りにくくなっているかを見立てます。 原因を一つに決めつけたり、早い段階で深掘りを進めたりするのではなく、安全、説明、生活回復、必要時の専門支援という順番を守りながら、家庭と学校で続けられる支援に落とし込むことを重視しています。

よくある質問|FAQ

Q. 解離は「演技」や「気を引きたい」のでしょうか?

A. 意図して作っている症状ではありません。周囲が「わざと」と捉えるほど、本人の安心が崩れ、固定化しやすくなります。

Q. 原因(トラウマ)を早く聞き出した方が良いですか?

A. 安全と生活が整う前の“深掘り”は逆効果になることがあります。対応の考え方は上の「支援の順番」を参照してください。

Q. てんかんとどう違うのですか?

A. 見た目が似ることがあります。必要な評価で見落としを避けたうえで、説明と支援の組み立てに進みます。

Q. 薬は効きますか?

A. 薬が直接「解離そのもの」を消すというより、不安・不眠・抑うつなどが強い場合に、生活を回復させる支援が入りやすくなるよう補助として検討することがあります。適応は状態によって異なるため、個別に判断します。

国内外のトピック

近年は、解離症状や機能性神経症状を、本人の意思や性格の問題として扱うのではなく、注意・意識・記憶・身体反応が一時的にまとまりにくくなる状態として理解する考え方が重視されています。

ICD-11では、従来「転換」と呼ばれてきた領域の一部が解離症群の中に分類され、DSM-5-TRでは機能性神経症状症(FND)として位置づけられています。小児の機能性発作(PNES)についても、てんかんなどが見落とされないようにしながら、本人と家族にわかりやすい説明を共有し、生活回復を支えることが大切とされています。

そのため支援では、原因を急いで一つに決めるよりも、安全確認、誤解を減らす説明、生活機能の回復、必要時の専門的支援を順番に進めることが重要です。

参考文献

  • World Health Organization(WHO). International Classification of Diseases 11th Revision(ICD-11).(2019-)
  • American Psychiatric Association(APA). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision(DSM-5-TR).(2022)
  • International Society for the Study of Trauma and Dissociation(ISSTD). Guidelines for the Evaluation and Treatment of Dissociative Symptoms in Children and Adolescents.(2003)
  • International League Against Epilepsy(ILAE). Consensus recommendations for assessment and management of psychogenic non-epileptic (functional) seizures (PNES) in children.(公開コメント終了:2022)

関連ページ

まとめ|次の一手

解離は「わざと」ではありません。原因を一つに決めつけるより、
安全の確認→説明の一致→生活回復→必要時の専門支援
という順番で整えることが回復につながります。

本人が安心できる環境と、学校での“階段”を作ることで、症状が軽くなる余地があります。家庭だけで抱え込まず、早めに相談することで、誤解と消耗を減らしながら立て直しやすくなります。

受診のご相談へ|相談の入口

ぼーっとする、記憶が抜ける、体が動かない、声が出ない、発作のように見える状態が続くとき、「脳や神経の病気ではないか」「学校で誤解されないか」「このまま様子を見てよいのか」と迷われるご家庭は少なくありません。

当院では、症状が起こる場面や前後のきっかけ、睡眠、登校、活動量、学校での負荷、家庭での緊張、不安、発達特性などを検討します。必要に応じて、小児科や神経領域の評価と並行しながら、安全確認と生活回復の順番を一緒に考えていきます。

診断名や原因を急いで決めるのではなく、まずは「わざとではない」という理解を家庭と学校で共有し、安心できる対応と生活の戻し方を整えるところから始められます。気になる状態が続くときは、一度ご相談ください。

※意識がはっきり戻らない、強い頭痛・麻痺・けいれんが続く、頭部外傷後に症状が出た、自傷や希死念慮が疑われる場合などは、安全確保と救急・小児科等への相談を優先してください。

監修・更新情報

監修:篠原一之(医師/医学博士/キッズハートクリニック外苑前院長/長崎大学医学部 名誉教授/長崎大学医学部 元教授)

最終更新日:2026年3月19日

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