子どものゲーム・スマホの問題とは

要点(まずはここだけ)

「何時間使ったか」だけでは判断できません。大切なのは、

  • 睡眠・登校など生活が守れているか
  • 切り上げ・切り替えなどコントロールできているか
  • 不安・抑うつ・学校ストレス・発達特性など背景に何があるか

この3点を押さえると、禁止で悪循環を強めず、現実的な立て直しがしやすくなります。

  • このページは自己診断のためではなく、受診や支援の選択肢を整理するための情報です。

受診の目安(こんなときは一度ご相談ください)

次のうちいくつかが当てはまり、2〜4週間以上続くときは、相談のタイミングです。

  • 睡眠が崩れ(夜更かし・昼夜逆転・朝起きられない)、学校や日中生活が回らない
  • 登校しぶり・欠席・遅刻が増え、学習や生活に支障が出ている
  • やめさせようとすると衝突が激しく、家庭だけで対応を続けるのが限界に近い
  • 課金・ネットトラブル(SNSのトラブル、危険なやり取り等)が心配
  • 気分の落ち込み、不安、強いイライラ、体調不良が続き、スマホや動画が唯一の逃げ場のようになっている
  • 暴力・自傷のほのめかしなど、安全面の心配がある

はじめに|悪者にしない

「やめる約束をしても続いてしまう」
「注意すると荒れて、家の雰囲気が悪くなる」
「夜が遅くなり、朝起きられない」

こうした相談は珍しくありません。ここで大切なのは、“意志が弱い”“しつけが足りない”と単純化しないことです。
子どもにとってゲームやスマホは、楽しみであると同時に、疲れや不安を和らげる手段(自己調整)になっていることがあります。睡眠の崩れ、学校ストレス、発達特性(ADHD/ASDの切り替えの難しさなど)が重なると、結果として“やめにくい状態”が強まりやすくなります。

当院では、ゲームやスマホを一方的に悪者にするのではなく、生活を守りながら、バランスを取り戻すことを目標にします。

整理の3軸|生活・制御・背景

初診では、次の3軸で状況を整理し、支援の優先順位を決めます。

(1)生活機能(機能低下)の有無

  • 睡眠、登校・学習、食事、家庭内の会話や日課など、生活の土台が保たれているかを確認します。

(2)コントロール(切り上げ・切り替え)の程度

  • やめる約束が守れるか、終了時に強い衝突が起きるか、本人が「やめたいのにやめられない」感覚があるかを見ます。

(3)背景要因(増える理由)の把握

  • 睡眠リズムの乱れ、学校ストレス、不安や抑うつ、発達特性(ADHD/ASDの切り替えの難しさ等)、体調(疲労など)を整理します。   

この3軸を押さえることで、“禁止”を先にして悪循環を強めることを避けつつ、現実的な立て直し方針を立てやすくなります。

共通サイン|家庭・学校

次のような変化が続くときは、生活の土台が揺れはじめているサインです。

(1)家庭で目立ちやすいサイン

  • 終了の声かけで反発が強く、毎回こじれる
  • 食事・入浴・就寝が後回しになり、日課が回らない
  • ルールをめぐる嘘や隠しが増え、親子関係が疲弊する
  • 課金・投げ銭・通販など、お金のトラブルが心配

(2)学校で目立ちやすいサイン

  • 夜更かしが続き、遅刻・欠席が増える
  • 集中が続かず、宿題・提出が回らない
  • 友人関係のストレスが増え、学校がしんどそうになる
  • 表情が乏しい/イライラが増える/頭痛や腹痛など体調不良が続く

(3)発達段階でみられやすい特徴(目安)

  • 乳幼児〜就学前期(0〜5歳):刺激への引きつけが強い時期。時間管理より、睡眠・遊び・親子のやり取りを守ることが中心です。
  • 小学生期(6〜12歳):「あと1回」「もう少し」が増えやすい時期。終わり方(合図と区切り)を固定し、ルールは「守れるサイズ」から始めます。
  • 思春期(12歳以降):友人関係やSNSが絡み、スマホが居場所になりやすい時期。鍵は「睡眠を守ること」と「現実世界の居場所(学校・家庭)を減らさないこと」です。

背景の見立て|よくある状態

子どものゲーム・スマホの問題は、単独で起きるというより、いくつかの要素が重なって起こりやすいのが特徴です。臨床的には、まず 発達特性(特にADHD)睡眠リズム を優先して確認します。

(1)ADHD(+ASD)特性:切り替えの難しさが前面に出る

ADHD傾向がある場合、「始めると止めにくい」「刺激(報酬)に引き寄せられやすい」「切り替えで感情が爆発しやすい」といった形で、使用が“本人の意思”以上に難しく見えることがあります。ASD特性(こだわり、見通しの立てにくさ、感覚特性)が重なると、さらに切り替えが難しくなることがあります。
ここは根性論より、環境調整(仕組み) が効きやすい領域です。

(2)睡眠リズムの乱れ:悪循環のハブになりやすい

睡眠不足は、集中力・気分・切り替えを下げます。疲れているほど刺激の強いものに流れやすく、夜型が進む→朝がつらい→日中の活動が減る→さらに夜型が進む、という悪循環が起こりやすくなります。

(3)不安・ストレス:スマホが“避難場所”になっている

学校の緊張、友人関係、進級・受験、家庭内ストレスなどが続くと、動画やSNSが「考えなくて済む時間」になり、増えやすくなります。

(4)抑うつ状態:子どもでは“落ち込み”として見えにくいことがあります

子どもの抑うつは、典型的な落ち込みよりも、朝起きられない/イライラ/動画が増えるなどの形で目立つことがあります。背景にADHDや睡眠の問題が重なっている場合も多いため、全体を整理した上で支援を組み立てます。

ゲーム障害|ICD-11

ICD-11では、ゲームの問題を「ゲーム障害(Gaming disorder)」として整理する枠組みがあります。ここで重要なのは、時間の長さそのものよりも、次の点に着目することです。

  • コントロールの困難(やめたいのにやめられない/切り上げられない)
  • 優先度の高まり(他の活動よりゲームが優先される)
  • 悪影響があっても継続(睡眠・学校・家庭関係が崩れても続けてしまう)

一方で、睡眠・登校・対人関係が保たれている場合は、「長時間=障害」とは限りません。医学的な評価が役に立つのは、生活が守れなくなっているとき、あるいは背景要因(不安、抑うつ、発達特性、睡眠など)を一緒に扱う必要があるときです。なお、実際の相談では「ゲーム」よりも、動画視聴(YouTube・短尺動画)、SNSのチェックやチャット、配信視聴が中心のこともあります。その場合は、背景(不安・ストレス・対人負荷・睡眠の乱れ等)に加えて、通知・対人トラブル・ネット上のリスクも含めて方針を組み立てます。

診断と評価|確認の順番

当院の目的は「やめさせること」ではなく、生活のバランスを取り戻すことです。診察では次を一緒に整理します。

  • 生活リズム:就寝・起床、朝のつらさ、日中の活動量
  • 学校:遅刻欠席、学習負担、友人関係、いじめ等の関連
  • 心の状態:不安、落ち込み、イライラ、自己評価
  • 発達特性:切り替え、衝動性、過集中、感覚特性、こだわり
  • 家庭の状況:ルールの作り方、衝突の起点、合意形成の可否
  • 安全面:課金、ネット上のトラブル、危険行動、自傷リスク

家庭・学校の工夫|禁止より土台

子どものゲーム・スマホの問題は、単独で起きるというより、いくつかの要素が重なって起こりやすいのが特徴です。臨床的には、まず 発達特性(特にADHD)睡眠リズム を優先して確認します。

(1)まず「睡眠」を守る(最優先)

  • 夜の終わりを作る:置き場所/充電場所/通知の扱いを“仕組み”で決める
  • 朝を固定する:起床→光→朝食→活動、をセットにして体内時計を戻す

  • 「夜を頑張る」より「朝を作る」方が、家庭では再現しやすいです。

(2)ルールは「短く、守れる形」から

  • ルールは少数(例:平日は就寝◯分前に充電、食事中は置く、など)
  • 例外を作るなら先に決める(テスト前、連絡が必要な日、など)
  • 破ったときの対応も短く(説教を長引かせない=燃料を足さない)

(3)「終わり方」を固定する(時間より切り替え)

  • 合図(タイマー/声かけ)→片づけ→次の行動(入浴・ストレッチ・読書など)
    “終わりの儀式”を作ると、衝突が減ることが多いです。

(4)抑うつ状態:子どもでは“落ち込み”として見えにくいことがあります

  • 遅刻欠席が増えている:短時間登校、午前のみ、別室、課題量や提出の調整
  • 休み時間の過ごし方:スマホに逃げなくても“息ができる導線”(相談動線・居場所)

  • 学校は「スマホの取り締まり」より、日中が回る形を先に作る方が安定します。

医療・心理の支援|目標と優先

医療では、スマホを敵にするより、生活機能の回復(睡眠・登校・気分)と背景要因への支援を優先します。

  • 不安・抑うつが強い:心理支援、負荷調整、必要時は医療的対応
  • ADHD/ASD特性が強い:環境調整、切り替え支援、家族支援、必要時は治療
  • 睡眠が崩れている:睡眠衛生(夜の設計)と生活リズムの立て直し
  • 家族が限界に近い:衝突を減らす仕組み作り、関係の修復を優先

目標は「ゼロにする」より、まず
1)夜が整う →(2)朝が回る →(3)学校・日中が安定する
という順で現実的に積み上げます。

立て直し|再設計のコツ

うまくいかないときほど、ルールの数や厳しさを増やすより、「土台が整う条件」を先に増やす方が、結果的に早道です。

  • 衝突が増えている:安全確保を最優先にし、落ち着いた時間にルールを“減らして”再設計します
  • 昼夜逆転が進んでいる:夜の端末動線(置き場所、充電、通知)を整え、起床時刻を固定して段階的に戻します
  • 不登校が絡む:スマホの量だけを標的にせず、登校形態・課題量・居場所づくりを同時に調整します
  • 課金やネットトラブルがある:アカウント設定(課金制限、フィルタ、2段階認証等)を優先し、再発予防を一緒に作ります

  • 暴力や自傷のほのめかし、重大な安全リスクがある場合は、早めに専門機関に相談してください

よくある質問(FAQ)

子どものゲームやスマホの使いすぎは病気ですか?

多くの場合、病気というよりも、ストレスや不安、退屈さの表れです。
まずは「どのくらい生活に影響が出ているか」「どんな気持ちのときに増えているか」を一緒に整理することが大切です。

何時間までなら大丈夫ですか?

「この時間なら絶対安全」という線はありません。
睡眠/登校/家庭生活が保たれているかどうか、翌日に支障が出ていないかどうかを目安に考えます。

親はどう関わればよいですか?

「今すぐやめなさい」と叱るより、「どう終わると楽か?」を話し合い、合意したルールと終わりの合図(声かけ・タイマー・次の予定)を決めることが有効なことが多いです。

どのタイミングで受診したらよいでしょうか?

昼夜逆転が続いている/学校や人間関係に大きな影響が出ている/家族だけで対応を続けるのがつらくなってきている、といった場合には、一度専門家に相談してみる時期と考えてよいでしょう。
受診=すぐに薬、というわけではなく、状況整理と生活の立て直しの相談から始まることがほとんどです。

国内外のトピック|最新知見

近年は国内外で、子どものデジタル利用を「全面禁止」ではなく、「健康と学びが守られる形にデザインする」方向へ進んでいます。家庭だけに負担を集めず、学校・医療・地域が連携して支える考え方が広がっています。
日本でも、国立病院機構久里浜医療センターなどを中心に、インターネット依存・ゲーム障害に関する家族支援や研修、連携体制が整備されてきました。

参考文献|ガイドライン

  • World Health Organization. ICD-11 Classification of Gaming Disorder, 2022.
  • American Psychiatric Association. DSM-5-TR: Internet Gaming Disorder, 2022.
  • Stevens MW et al. “Global prevalence of gaming disorder: a meta-analysis.” Addiction, 2021.
  • Twenge JM et al. “Digital well-being education and adolescent mental health.” Journal of Adolescent Health, 2023.
  • 国立病院機構 久里浜医療センター「インターネット依存症・ゲーム障害に関する家族支援プログラム」
  • 内閣府「令和5年度 青少年インターネット利用環境実態調査」, 2023年

関連ページ|院内リンク

ゲーム・スマホの使いすぎは、背景に「睡眠」「不安」「抑うつ」「発達特性(ADHD/ASD)」「学校ストレス」が重なっていることが少なくありません。気になる項目があれば、関連ページも参考にしてください。

ADHD(注意欠如・多動症)|忘れ物・集中・切り替えの工夫

ASD(自閉スペクトラム症)|こだわり・感覚・対人負荷への支援

子どもの睡眠障害|夜更かし・昼夜逆転・朝起きられない

子どもの不安症(不安障害)|回避・登校しぶり・緊張が強い

子どものうつ病|「落ち込みに見えない」不調(朝のつらさ・イライラ)

不登校・学校ストレス|段階登校・別室・家庭での支え方

まとめ|次の一手

  • ゲーム・スマホの問題は、「時間の長さ」だけでは判断できません。
  • 大切なのは、①生活(睡眠・登校)が守れているか、②切り上げ・切り替えのコントロールができているか、③背景(不安・抑うつ・学校ストレス・ADHD/ASD・体調)に何があるか、の3点です。
  • 背景としては、特に ADHD(+ASD)特性睡眠の乱れ が“やめにくさ”の中心になっていることが多く、仕組み(環境調整)で改善しやすい領域があります。
  • 支援は「禁止」よりも、睡眠を守る→守れるルール→代替の回復手段、の順で積み上げると現実的です。
  • 家庭だけで抱えず、生活への影響が続くときは早めに相談することで、衝突を増やさずに立て直しやすくなります。

受診のご相談|相談の入口

当院では、次の順で「回る形」を一緒に作ります。

1)困りごとの全体像を整理(睡眠・学校・心身・発達特性・デジタルの位置づけ)

2)家庭で回る合意ルールを設計(短く、守れる形から)

3)必要に応じて心理支援・家族支援を追加

4)学校や地域と連携し、現実の居場所を減らさない調整

5)併存(不安、抑うつ、睡眠、発達特性など)があれば並行して支援

「今すぐ治療が必要か分からない」という段階でも、状況整理と立て直しの相談として受診いただけます。

監修・更新情報

監修:篠原一之(医師/医学博士/キッズハートクリニック外苑前院長/長崎大学医学部 名誉教授/長崎大学医学部 元教授)

最終更新日:2026年2月8日

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