1度にひとつの声しか出せない
こんにちは。キッズハートクリニック外苑前 心理士の信吉です。
今日は「声を出して表現する」ことについて立ち止まって考えてみたいと思います。
沈んだ気持ちを立て直したり、ストレスに対応したりするとき、「体験を言葉にする」のは役立つことが多いですよね。
話しながら自分がまとめた言葉を改めて聞いてみて、「自分ってこんな風に思っていたんだ」と気づけることもありますし、「自分のこと責めてたけど、こうして話してみると、結構がんばってきたなぁ」などと客観的に整理できることもあります。
言葉を受け止めてくれる相手がいれば、共感してもらえて安心できたり、自分にない視点をもらえたりとさらに楽になる可能性が広がりますね。
しかし、タイトルにも書かせていただきましたが、私たちは1度にひとつの声しか出せません。もちろん表情や身振りでニュアンスを加えることはできますが、基本的には言葉を並べることで、情報を伝えていきます。
そうすると、ある言葉を選んで口にすると、当然その瞬間はそれ以外の言葉は言えなくなります。もし一言でバシッと自分を表現できる言葉が見つからない場合、例えば「イライラするっていうか、もやもや?なんか納得できなくて、頭に残ってるんだよね」といった感じで、言葉を重ねていく必要が出てきます。
でもそんな風にぽんぽん言葉を出す元気がないとき、そんなにいくつも言葉を思いつかないとき、どうしたらいいでしょうか…
先ほどの例だと、最初の「イライラする」の部分で終わるか、「なんかいや」と範囲の広い言葉でまとめるか、言うのを諦めるか…、なかなか難しいですね。
そのため、聞き手としては「相手がいま発した言葉だけが全てではないのかも」ということをこころに留めておけるといいのかなと思います。
カウンセリングでも、ゆっくり言葉を紡いでいくタイプのお子様に「いま話してくれたこと以外にもきっといろいろな気持ちがあるよね」「いま教えてもらったことが全部じゃないんだよね?」などと伝えると、ホッとした表情をされることがあります。
一刻も早くお子様には元気になってほしいし、そのために状況を理解したい。
だからこそ、声を出して気持ちを伝えあうとはどういう営みなのか、いいところと限界があるところを意識しておきたいなと思います。
信吉真璃奈